読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

いちこのブログ

社会人になりました。日々の暮らしについて書いています。

うみべの女の子を読んだ

友達に借りた漫画、浅野いにおさんの『うみべの女の子』。

個人的に感じたこと、考えたことなど感想を書いていきます。完全にネタバレしてるので、大丈夫な人のみ読んでください。

 

想像に委ねられる登場人物の心情

この漫画には独白の表現がないので、登場人物の考えてることは、セリフと行動の描写からしかわかりません。現実世界の人間関係みたいに、言葉や表現から人物の思いを考える感じ。でも2巻完結の漫画の登場人物の心情を全部理解することなんて到底できないので、どこかもどかしい気持ちで読みました。

絵や言葉で細部まで表現することができるので、多く漫画では共感や気持ちの想像が容易にできると思うんです。

でも、この漫画はそうじゃなくて。街並みや海辺といった細やかな景色の描写や、登場人物の言葉、表現から想像力を掻きたてられます。

 

作中に出てくる音楽

想像するという面で印象的だったのは、音楽が出てくる場面でした。はっぴいえんどの「風をあつめて」。

磯辺の部屋で小梅と磯辺がこの曲を聴くシーンや、小梅がひとりイヤホンで聴きながら登校するシーンがあるほか、小梅が台風のなか磯辺を探す場面でもこの歌がでてきます。

 

音楽を聴くときって、その曲を聴いたある場面や、その曲を聴くと思い浮かぶ人や、一緒に聴いた人なんかを思い出したりするじゃないですか。

どんな曲なんだろう。どんな思いで聴いてるんだろう。

小梅が携帯でこの曲を聴きながら登校するシーンなんて特に、ついそんなことを考えてしまいます。ちなみにその場面は「風をあつめて」にはちょっとそぐわない雨模様。けど、雨のなか聴くのもいいかもしれない。どんよりした日に。

 

はっぴいえんどの「風をあつめて」、実際に聴いてみました。

 

「風をあつめて」 はっぴいえんど - YouTube

 

どうして磯辺と小梅がふたりで聴いていたのはこの曲だったんだろう。整理しきれない、ぐちゃぐちゃした気持ちを抱える14歳のふたりが聴いていた曲だと思うと切ない気がしました。

 

磯辺と小梅の関係

中学生でセックスなんてませてるなぁと、中高時代恋人なんておらずましてやセックスなんて遠い世界の話だったわたしは思ってしまうわけですが。

 

磯辺と小梅はいわゆるセフレのような関係。

磯辺は何度か付き合いたいという意思を伝えるのですが、小梅は相手にせず、また「やっぱキスはやだ」と断ります。

 

はじめは磯辺が小梅に思いを寄せるという構図なのですが、小梅がこっそり磯辺のパソコンのファイル(うみべの女の子)を消してしまったことをきっかけに、立場は逆転。磯辺は小梅に冷たくなり、逆に小梅は磯辺への思いを募らせていきます。

 

小梅と磯辺のような関係性って、ありがちなのではと思います。俗にいうセフレのような。

 

セックスするだけの関係って、ただそれだけでいることってきっと難しいんですよね。どこか、感情が入り込んでしまう。片方が付き合いたいと思うときもう片方はそうじゃなくて、逆にもう片方が付き合いたいと思うときには向こうが冷めてて、みたいな。

 

付き合いたいとか単純な話以外にも、セフレの関係ってもっと多様なんじゃないかなって思います。付き合ってるって関係もそう。

名前でくくれる関係性なんてたかが知れてて、名前がないだけで本当はいろいろな関係が存在してるんだと思います。

 

でも、それは大人になってからの話だったはずで。中学生っていうと考えや人間関係もまだまだ幼い気がしますよね。しかし、彼、彼女の内面はわたし達が思っているよりずっと深くて見えづらい。人間関係も、私たちが想像する以上に複雑になり得ます。

好きだった先輩に性的な行為を強要された腹いせに、以前自分に告白してきた男の子とセックスしたり。

自殺した兄が運営していた掲示板の管理人を引きついだり、兄を自殺に追い込んだ先輩たちへの復讐の意味もこめて、小梅を男性フシンにした先輩たちを襲ったり。

単純といえば単純だけど、他人には簡単に理解できないような感情をそれぞれが抱えています。

 

磯辺と小梅があのような関係であったのは、2人が抱える「何か足りない」感覚であったり、脆さであったのかな、と思います。

中学生くらいって、大人からは見えないわからないけど、そういう脆さや危うさを抱えてるものですよね。

「してもしても何か足りない気がするのは、なんでだと思う? 」

小梅の言葉は、大人である私たちの心にもしみる重さがあります。

セックスが持つ意味はひとつじゃない。人はなにを求めてるんでしょうか。

 

ふたりが別れるシーン

物語の終盤、小梅が磯辺に

「じゃあ 最後に一回だけ

キスしてもらっていいですか?

そしたら全部忘れるから……」

と言って泣く場面があります。

 

小梅の泣き方、、わたしが元カレにフラれたときのわたしそっくりで、なんとも言えない気持ちになりました。。。見っともない顔で泣いちゃう。かつて自分を好きでいた人、自分が好きだったひとにふられるのは悲しいし切ないし悔しい。部屋に帰ってひとり嗚咽して泣きましたよ。。今となっては懐かしい。。

 

それは置いておいても、その場面が海辺っていうのが、つらいです。物語の序盤、初めてを経験した小梅と磯辺がふたり並んでぎこちない会話をしていたときも、磯辺がSDカードを拾ったときも、すぐそこに海の景色がありました。一緒に過ごした海辺でふたりの関係が終わるの、切なすぎます。 

 

磯辺がキスしなかった理由は、なんでなんですかね。

「…最後までお前に振り回される訳にはいかない」

この言葉は本心だったんじゃないかと思います。自分が相手の気持ちに引きずられてしまうのが嫌なのもあっただろうし、最後に思い出を作りたくなかったのかな。これで終わりにしたくなかったのかもしれません。好きだった相手をふるのは辛いことだったろうな。

結局、最初から最後までふたりはキスしてないんですよね。

「愛のあるセックスなんて幻想なんだよ‼︎」

磯辺の言葉を思い出します。

 

泣きすがる小梅を残して歩き出した磯辺が、海辺に見たお兄さんの影。兄の呪いは解けたんだと信じたいです。

 

まとめ

性的な描写が丁寧な漫画ではあるんですけど、それだけじゃないです。14歳の話で青春を思い起こす場面もたくさんある一方で、大人になった私たちにも通じる複雑な心情が描かれています。

最初に書いたように読者の想像とか読み方で受けとり方も変わってくるはずなので、そこも面白いポイントだと思います。

磯辺も小梅も愛おしいです。

 

語彙力不足でうまく伝えきれていない部分もたくさんあるのですが、どうか大目にみてください。

ここまで読んでくださりありがとうございました。

 

余談

小梅と磯辺の携帯メールでのやりとりでRe:が続いていくの、自分の中学高校時代を思い出して懐かしくなりました。

好きな人とのメールが続いてるって実感できるもの。そんな時代もありました。

あと小梅が書いた手紙にはまっすぐな思いが綴られていて、純粋に誰かを好きになるってこんな感じなのかなと思いました。恋愛ってすごい。(語彙力……)

CDと手紙を持って暴風雨のなか走り回る小梅もほんとに愛しいです。

大人になったらそういう恋愛ってできなくなるんでしょうか。一度くらいはしたいものです。

 

 

うみべの女の子 1 (F×COMICS)

うみべの女の子 1 (F×COMICS)

 
うみべの女の子 2 (F×コミックス)

うみべの女の子 2 (F×コミックス)